左折時に単車を巻き込んでしまった場合の過失割合
Question

片側三車線の信号付交差点にて、左車線、中央車線ともに駐車車両がいたため、右車線を走行し、信号待ちの状態で停車後、青信号に変わったタイミングで左折を試みたところ、単車を巻き込んでしまいました。
ウインカーを出さずに左折してしまった私の落ち度も大きいとは思いますが、もとはといえば二重駐車していた車や、間をすり抜けようとしてきた単車にも落ち度はないのでしょうか。
Answer
直進単車と左折四輪自動車の事故における基本過失割合は、単車20、四輪自動車80とされています。
左折時には「あらかじめできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って、徐行しなければならない」(道交法34条)と規定されていますが、設問のように二重駐車等により、そもそも左端車線を走行すること自体不可能な状況では、特段不利に評価されるとは考え難いところです。
もっともウインカーを出さなかったことは、四輪自動車側に不利な修正要素と評価される可能性が高いでしょう(道交法53条1項、同法施行令21条)。
他方で、二重駐車の状態であったことは、中央車線に戻ることを予見させうる事情として、漫然とすり抜けを試みたという単車側に不利な修正要素と評価される可能性があります(参考裁判例、東京地裁S17.3.15判決)。
以上の点を総合すると、私見としては、ウインカーを出さなかったという四輪自動車側に不利な事実が明らかである以上、四輪自動車側の過失が減ぜられる形で基本過失割合が修正される可能性は高くないと考えます。
■過失割合についての実務上ポイントコーナー■
上述の参考裁判例では、
(四輪自動車)は第2車線に戻るにあたり、方向指示器で合図を出していない上、後方の車両の動静を十分注視して安全に運転すべき注意義務を怠った…本件事故発生に関する(四輪自動車)の過失は重大である。
他方、(四輪自動車)は、駐車車両の横に停止する際、第2車線と第3車線にまたがって停止したものであり、そこを通過後は第2車線に戻ることもあり得るから、(単車)にも、停止後発進するにあたり、被告車の動静を十分注視して安全に運転すべき注意義務があるのにこれを尽くさなかったものと認められる。
として、過失割合につき、単車15、四輪自動車85との判断を下しています。
四輪自動車がウインカーを出さなかったことについては、同車の過失を"10"程度加算するのが通常ですので、本件では、上記下線部分の事情につき、単車側の過失を"5"程度加算する事情として取り扱われたものと推測できます。