「交通事故と雇用保険」に関するご質問
Question
雇用保険の基本手当を受給している失業者が、交通事故にあった場合、雇用保険から何らかの給付措置はありますか?
Answer
雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)は、被保険者が「失業」した者であることが受給要件の一つです。
ここにいう「失業」とは、労働の意思と能力を有するにもかかわらず、職業につくことができない状態を指すものです(雇用保険法4条3項)。
怪我により働くことができない状態は、労働の能力のない状態ですので、「失業」にあたらず、基本手当は4週間に1度の失業認定を受けた分をその都度支給するものであるため(同法30条1項)、怪我が15日以上にわたる場合には、基本手当を受給することができません。
同法は、このような場合につき「傷病手当」という制度を設けています。これは、基本手当の受給可能期間のうち、すでに受給した期間を除いた期間について、基本手当と同額を支給するというものですので(同法37条1項、3項、4項)、特に手厚い保護がなされるというものではありません。
もっとも、傷病手当の認定を受けなければ、それすらも受給できなくなってしまいますので、原則として、職業に就くことができない理由のやんだ後の最初の支給日までに、公共職業安定所の長に傷病手当支給申請書及びに受給資格者証を提出し、傷病手当の認定を受ける必要があります(同法施行規則63条1項、2項)。
■交通事故案件・雇用保険の実務上ポイントコーナー■
雇用保険の傷病手当は、給付名目の変更という側面が強く、特に被害者・傷病者救済を強く図るような制度設計にはなっていません。
例えば、一般の自己都合退職者の場合、失業から3カ月間、給付制限(基本手当不支給)が付されるのが通常です(雇用保険法33条1項)。
この給付制限期間中に、怪我や病気により15日以上働けない状態になったとしても、傷病手当は支給されません(雇用保険法37条5項)。
また、その受給期間についても、基本手当の残受給可能日数とされ、傷病手当として支払われた日数分は基本手当の残受給可能日数から差し引かれます(雇用保険法37条4項、6項)。
失業中の方や自営業者の場合、社会保険制度による救済措置が乏しいため、任意保険に人身傷害保険・無保険車傷害保険を付帯させておくことや、健康(被用者)保険を任意継続しておく等、対策措置も検討する必要があるでしょう。